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化学メーカーとは

化学メーカーとは

化学メーカーとは、化学反応を利用して製品を製造し、主に法人向けに販売する企業を指します。一般消費者向けの生活消費財を製造販売する化学メーカーもありますが、 法人を対象としたいわゆるBtoBビジネスが主流であり、一般消費者の知名度は低いことが多いです。

化学メーカーは石油や塩などを原料として 主にはプラスチックや合成繊維、化粧品、医薬品を製造しており、近年では自動車や電子機器の部品なども含む「金属でないモノ」を製造、販売しています。衣食住に加えて、自動車、電子機器、航空・宇宙、環境など私たちの生活に密接な関りをもっています。

例えば皆さんがこのコラムをご覧になるために使っているスマートフォンやパソコンにも多くの化学メーカーが関わっています。スマートフォンやパソコンを作っているのはApple、ソニー、SAMSUNGなど電子機器メーカーです。しかしその筐体や液晶パネル、リチウムイオン二次電池など部品やその材料の多くは化学メーカーがつくっています。そのほか皆さんの着ている服も、農作物を育てるための肥料や農薬も、毎日使う自動車やすべての電子機器も化学の力なしでは成り立たず、現代社会を素材から支えています。

化学メーカーが製造する製品を、原材料から最終製品までを位置づけをみると以下の表の通りです。製品はその製造過程によって①基礎原料(原油、塩など)、②汎用品(エチレン、か性ソーダなど)、③製品材料(プラスチック、ゴム、化学繊維など)、④最終製品(医薬品、化粧品など)に分けられます。

主な化学製品の原料から最終製品までの位置づけ

数字でみる化学業界の特徴

化学メーカーは製造しているものが多岐にわたるためあまり馴染みがありませんが、我々の生活に欠かせない存在であることがお分かり頂けたと思います。ここでは化学業界・メーカーに関する数字から、その特徴を見ていきます。

まず化学業界の規模を見てみましょう。化学業界全体の出荷額は42兆円にものぼり、これは日本の製造業全体の出荷額300兆円の14%を占めています。また業界の規模を図る指標に「付加価値額」というものがあります。これは、売上高から原材料費や仕入費などを除いた額で、「企業の経済活動によって新たに生み出された価値」の総額であり、言わば業界全体の利益額を指します。化学業界の付加価値額は16兆円と全体の18%を占めています。これらはいずれも自動車を中心とする輸送用機械器具業界に次ぐ2位であり、「ものづくり大国」日本を代表する産業の一つと言えるでしょう。

業種別出荷額

業種別付加価値額

出所:経済産業省 工業統計調査より作成

注:本コラムでは日本標準産業分類の製造業のうち「16.化学工業」、「18.プラスチック製品製造業」、「19.ゴム製品製造業」の3つを合わせて「広義の化学産業」と定義しております。

利益率が高いのも化学メーカーの大きな特徴の一つです。日本の製造業全体の売上高営業利益率は2019年度3.5%に対して、化学メーカーは8.5%と高い利益率を誇っています。これは日本の製造業の中で1位です。過去を振り返ってみても安定的に高い水準で推移していることが分かります。リーマンショックによる世界同時不況の時でさえ、5%の近い利益率を維持していました。

売上高営業利益率推移

出所:経済産業省 工業統計調査より作成

高い利益率を実現できる理由として、①製造業の上流工程を押さえていること、②各社独自の技術力で製品の差別化ができていることが挙げられます。

最終製品を製造販売するいわゆるBtoCメーカーは、我々一般消費者の人気や流行りに左右されます。スマートフォンでいえばiPhone・ギャラクシー・Huaweiなど、自動車でいえばトヨタ・日産・ゼネラルモーターズ・フォルクスワーゲンなど多くの選択肢がある中で、日々移り変わる消費者好みに合わせて販売していく必要があります。機能性に違いがなければ価格競争に陥り、安く販売して売上を確保しなければいけません。

一方で化学メーカーなどBtoBメーカーは最終製品をではなく、部品やその素材という製造業の上流工程に位置しています。すべてのスマートフォンや自動車をつくるために必要な部品や素材を作っているので、スマートフォンや自動車が一切売れなくならない限りは世界中のどこかに顧客が存在することになります。極端に言えばソニーが売れなくなったら、世界的に成長しているSUMSUNGなど韓国・中国の電子機器メーカー向けに販売すればいい、日産が売れなくなったら話題のテスラ向けに販売すればよいのです。

もちろん同じような部品や素材を作る化学メーカー同士の競争はあります。モノや人が自由に国境を越えてビジネスが行われるグローバル経済においては、世界中の化学メーカーがライバルになりえます。その中においても化学メーカーは独自の高い技術でニッチな市場・製品で強みを持っている企業が多く、安定的な経営を実現しています。

モノづくり本質は「モノを作って売ること」ではなく「モノを通じて問題を解決すること、便利にすることこと」です。日々の生活を便利で豊かにする最終製品の性能はその部品や素材に左右されるため、化学メーカーは最終製品メーカーから高い品質が要求されます。

化学メーカーはこの要求に応えるため多額の研究費をかけています。化学業界全体の2019年度の研究費は2兆6千億円と、製造業全体の21%を占めています。これは売上の約5%以上であり、各企業はさらに高度な技術を確立するためや全く新しい技術の開発に積極的に取り組んでいます。

企業研究費(製造業)の産業別割合

出所:総務省 科学技術研究調査より作成

最終製品メーカーの要求に応えるため長年に渡る研究・改良によって、各企業がユニークな独自技術や誰も真似できない高い技術力をもっています。確立した高い技術力や独自の技術は簡単に真似できるものではありません。その部品や素材がないと最終製品にとって欠かせない存在になっている場合もあります。この独自技術・高度な技術のおかげで他の企業が新規参入することが難しく、化学業界は他の業界に比べて競争が激しくなく、安定的な経営が実現できます。

ここまでのまとめ

  • 化学業界は42兆円の出荷額を誇る日本の基幹産業の一つである。
  • 利益率は製造業中1位であり、安定的な経営を実現している。
  • 上流工程に位置し、企業ごとに独自の技術・高度な技術をもっていることが理由である。
  • この技術力を支えているのが多額の研究費である。

次の記事:化学メーカーの分類と代表企業

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