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③大手証券会社の分析

①証券会社の分類②証券会社の業務を理解していることが前提の記事です。)

さて、ここまで証券会社について長々と解説しましたが、やっと各証券会社の分析に入ります。
企業分析と言っても、投資家目線と就活生目線は違います。
本ページの企業分析は、就活生が志望動機作りをするための情報提供を目的としています。

もうご存知でしょうが、大手証券会社とは、
・野村證券
・大和証券
・SMBC日興証券
・みずほ証券
・三菱UFJモルガン・スタンレー証券

この5社になります。

業務範囲はほぼ同じと考えてもらっていいです。
証券会社の業務でも解説したように中堅・下位証券と大手証券の業務範囲は違いますが、大手証券同士だとほぼ変わりません。

ですから、

「○○の業務に携わりたいので、大手証券の中でも御社を志望しています!」

みたいな志望動機に対しては、

「それ他の大手証券でも出来ますよね?」

と返されてしまうんじゃないかと思います。

こういう理由もあって、大手証券の志望動機としては「社員が良かった」とか「人が魅力的だった」みたいのが用いられがちです。
それがNGというわけでもないのですが、抽象的ですし、大手5社はいずれも社員が数千~数万人といますから、就職活動中10人や20人の社員に会っただけで「人が良かった!」と言うのも根拠として弱いとは思います。

ダメじゃないんですよ。ダメじゃないんですけど、その前に5社の違いを押さえておくべきです。

このページでは、結構似たり寄ったりの5社の違いを、どうにか明らかにしようと試みてみます。

業界地位の整理

まずは大手5社の業界地位から整理していきましょうか。
「いや3大証券なんだから、1位は野村證券で、2位は大和証券、3位はSMBC日興証券でしょ?」

・・・なんて、証券業界を少し知っている方々は思うかもしれませんが、「3大証券」と言われていた時代と違い、現代の証券業界はちょっと複雑です。
現代の証券業界(大手5社)の状況を一言で言えば、

「野村證券とその他4社」

でしょう。

一般的に、業界地位というのは売上高で決められることが多いです。
売上高の高い順に、1位、2位、3位…と。
証券会社の場合、売上高ではなく「営業収益」という科目が用いられます。
早速、大手証券5社の営業収益を直近5年分見てみましょう。

大手証券会社の分析_1

まず、公平に比較しよう

上のグラフは、“各証券会社”の営業収益(連結)で作成しています。
“ホールディングス”の営業収益ではありません。

注意して頂きたいのは、大手証券5社のうち「野村證券(野村ホールディングス)」、「大和証券(大和グループ本社)」、「三菱UFJモルガン・スタンレー証券(三菱UFJ証券ホールディングス)」は、ホールディングス化しているということです。
一方で、「SMBC日興証券」と「みずほ証券」はホールディングス化していません。

大手証券会社の分析_2

ホールディングス化している企業と、ホールディングス化していない企業を比較するっていうのは、アンフェアじゃないかと思うんですね。
前者の営業収益は、様々なグループ企業の営業収益を含んでいるわけですよ。

例えば野村ホールディングスなら、野村證券の他に、「野村信託銀行」や「野村アセットマネジメント」なども営業収益に含まれています。
大和証券グループ本社なら、「大和証券投資信託委託」や「大和ネクスト銀行」などの営業収益まで含まれてるんです。
そこでこのグラフは、ホールディングスではなく、“各証券会社”の営業収益(連結)で作成しているわけです。

各社の営業収益を見てみる

大手証券会社の分析_3

グラフを見て分かる通り、営業収益において圧倒的なのは野村證券。ホールディングスで比較しても業界1位です。
問題は2位以下ですね。

証券業界2位は一般的に大和証券と言われます。
しかしそれは大和証券グループ本社の話であって、大和証券自体の営業収益は、直近5年だと業界3~4位で推移しています。
同じく「3大証券」の一角であるSMBC日興証券も、直近5年の営業収益は2~4位で推移しています。
みずほ証券は2~3位で推移、三菱UFJモルガン・スタンレー証券はずっと5位の位置にいます。ホールディングスでも5位です。

営業収益で見た業界順位

直近5年の営業収益で各社を比較した場合、
野村證券→ホールディングスでも非ホールディングスでも絶対的1位
大和証券→ホールディングスとしては2位、非ホールディングスでは3~4位
SMBC日興証券→2~4位
みずほ証券→2~3位
三菱UFJモルガン・スタンレー証券→ホールディングスでも非ホールディングスでも5位。

・・・となります。
つまり、野村證券と三菱UFJモルガン・スタンレー証券以外、ホールディングスか非ホールディングスかでも、決算年度によっても、業界順位が変わってしまうということです。
正直、営業収益での順位付けは面倒ですし、就活生の手に余るのではないかと思います。
そこで、預かり資産での順位付けを提案します。

預かり資産で見た業界順位

証券業界の場合、営業収益の他に、「預かり資産」で順位付けされるケースも多いです。
預かり資産とは、証券会社が顧客から預かっている資産のことで、顧客が購入した株や債券、投資信託などの合計額を指します。

2018年の預かり資産ベースで見れば、業界順位は下記のようになります。
1位 野村證券→117.7兆円
2位 大和証券→68.1兆円
3位 SMBC日興証券→61.6兆円
4位 みずほ証券→44.3兆円
5位 三菱UFJモルガン・スタンレー証券→38.7兆円

個人的には、預かり資産ベースで業界順位を語った方が就活生にとってシンプルで分かりやすいんじゃないかなと思います。

で、志望動機にどう活かす?

志望動機を作るなら、野村證券が最も楽でしょうね。
営業収益でも預かり資産でも圧倒的な1位ですから、例えば「業界1位のスケールメリットを活かして~」とか、「最も顧客に支持されているから~」とか、いくらでも言い様があると思います。

2位の大和証券も言い方によりますね。
「1位でいるよりも、1位を追い抜きたい」なんてフレーズは、業界2位の企業の志望動機として結構用いられます。

SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は結構難しいところです。
共通しているのは「銀行系」という点ですね。

そこで、下記で銀行系・独立系の強み・弱みをまとめます。

銀行系と独立系

①証券会社の分類ページにも書きましたが、大手証券も「独立系」と「銀行系」に分けられます。

大手証券会社の分析_4

銀行系・独立系証券の強み・弱み

銀行系証券の強みは、「銀行からの顧客紹介」や「投資銀行業務における案件獲得」にあると考えられます。いずれも、「銀行の顧客基盤の恩恵を受けられる」という点が共通しています。
逆に言えば、これらの恩恵を受けられないのが独立系の弱みと言えます。

一方で銀行系証券の弱みは、「親会社(銀行)出身者が各役職に流れこんでくる」点と、「営業現場のルールが比較的煩雑(かもしれない)」という点でしょう。
前者は出世願望の強い就活生にとってのデメリットですね。
逆に独立系証券を志望する際は、銀行系証券を志望しない(志望度が低い)理由として使えると思います。

後者はあくまで僕が見聞きする範囲での話ですから、就活生の皆さんがこれを志望動機に活かすならば、OB訪問などで裏取りした方がいいと思います。
その上で間違いないと判断したら、独立系証券を志望する理由として使えると思います。

銀行系が良いとか独立系が悪いとかって話ではなく、志望先に応じて良し悪しを使い分ければいいと思います。
証券業界を志望するならば、恐らく5社全て受ける就活生が多いでしょうからね。

で、志望動機にどう活かす?

銀行系証券を受ける際は、上記などを参考に、銀行系証券を志望する理由を述べてしまえばいいと思います。
それだけで、野村證券や大和証券といった独立系証券を志望しない(志望度が低い)理由を説明することにもなります。

後は、銀行系証券の中で差別化するだけですね。
預かり資産ベースで見れば、SMBC日興証券が銀行系証券1位、営業収益ベースでは、みずほ証券が銀行系証券1位の年もあります。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券はやっぱり難しいですが、まぁ親の三菱UFJフィナンシャルグループは金融業界最大手なわけで、その辺りを絡めて「グループ力が最も強い~」などと言っておくとか。

独立系証券を受ける際は、この逆をやればいいです。

以上が、志望動機を念頭に置いた各社の分析です。
大手証券会社の決算データや平均年収などはこちらにまとめてあります。
興味があればご覧ください。

野村證券
大和証券
SMBC日興証券
みずほ証券
三菱UFJモルガン・スタンレー証券

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