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化学メーカーの職種、就職活動について

前回のコラムでは学生の皆さんに馴染みのない化学業界の特徴についてご紹介しました。今回は、より就職活動を意識した内容をお届けしていきます。エントリーシートや面接で志望動機を答える助けになれば幸いです。また知名度は高くありませんがニッチな分野でNo.1を誇る優良企業も紹介しますので、企業探しの参考にしてみてください。

化学メーカーの仕事内容

化学業界に魅力を感じ、化学メーカーへの就職に興味を持ったら、次にどのような仕事があるのか知ることが大切です。就職してから自分がどのような仕事を行うのかイメージできていないと、自分のやりたいことができるのか、自分に適性があるのかも判断できません。そもそも、仕事内容を理解していなければ志望動機も曖昧なものとなり、選考においては志望度が低いとみられてしまう可能性があります。化学メーカーの仕事内容は多岐にわたりますが、それぞれの特徴を知り、自分に適性があるかも含めてチェックしておきましょう。

1.営業

営業は化学以外のメーカーや業界と同じように、モノを売る仕事です。最終製品ではなく素材や部品を販売するため、顧客のほとんどが他のメーカーあるいは商社であり、いわゆるBtoB営業です。製品を販売するという点は他の営業職と変わりませんが、化学製品という性質上、専門的な知識が必要になります。今は化学に関する知識がなくても、就職した後に業務の中で学んでいくことになります。顧客とのコミュニケーションだけでなく、工場、研究、その他社内の多くの部署の間に立って調整することも求められます。

化学メーカーの営業は、大人数のチームをではなく「少数精鋭」で行われる場合が多いです。部署あたり5~10人ほどの人数でも数十億〜数百億の売上があるなど、扱う金額の規模が大きい点も特徴です。既存商品を既存顧客に販売することが多いため、販売計画の策定、生産管理、生産量や時期の調整、顧客の製品に対する要望を聞き、研究・製造部門にフィードバックして製品の改良につなげることが主な仕事です。

もちろん新商品や新規市場開拓といった営業もあります。しかし新たな素材や部品が市場に広く受け入れられるためには数年~10年という長い期間を要します。根気のいる営業活動が求められますが、その分一度受け入れられれば安定性な販売が見込めます。

また化学メーカーは海外への販売も多く、海外売上高比率が50%を超える会社も数多くあります。つまり当然海外の顧客も多く、年齢に関係なく海外営業を担当することも少なくありません。

2.生産管理・品質管理

営業が顧客の求めている製品やその数量、販売する時期を調整して販売計画を立てたあと、社内ではいつ、とれくらい、どの製品を製造するかという生産計画を立てることになります。この生産計画を作成し、それに基づいて必要原材料の管理や製造コストの管理、納期管理、在庫管理、工程管理を行うのが生産管理の仕事です。

どれくらいの量を生産するか、売れ行きや在庫、社会のトレンドを見ながら管理する必要があり、ただ毎日工場を稼働させて、定量生産をすればよいわけではありません。複数の製品を製造していれば、在庫状況や優先順位の変動によって工程を変更するなど臨機応変な対応も求められます。想定していたコストで製品を製造できているのか日々モニタリングし、必要に応じで分析、改善策を提案することもあります。

加えて当然ながら製品の品質も重要です。顧客が期待している品質を満たした製品を販売しなければなりません。また化学製品の中には有毒な危険物もあります。危険物の内容や扱い方を明記し、また各法令に則った製品であることを証明し、安心して出荷できるようにするのが品質管理の仕事です。

このように、顧客の希望に合わせて適切なコストで製造し、安全に販売するために、モノづくり現場の司令塔を担っているともいえる仕事です。

3.研究・開発

研究・開発は製品を作り出す仕事であり、メーカーの心臓部ともいえる仕事です。新しい製品の種を見つけるための基礎研究、その成果を実用的な技術にするための応用研究、最終的な商品化や既存製品の改良を行う開発研究など、研究職の中でも業務は多様です。扱う製品が企業ごと異なるため、研究内容も企業ごとに異なります。企業ごとの独自の研究開発が高利益率で安定的な経営の核になるため、化学メーカーの中でも研究職に従事している人の割合が高くなっています。

4.製造

製造職は工場で実際のモノづくりを行う仕事です。顧客の要求を踏まえて決められたレシピ(製品の設計図)に沿って、必要な量を安定生産していきます。化学物質は人体に有害なものも多く、さらにそれらを巨大なプラントの中で超高温にしたり、混ぜたり、化学反応を利用して製造するため、非常に危険なモノを扱います。日々プラントや製品に異常がないか確認し、安全な生産活動に取り組みます。

5.購買

化学製品を製造するための原材料や、工場を建てるための資材を調達する仕事です。営業同様に化学的な専門知識が求められます。また化学メーカーが海外顧客に販売しているように、製品を作るのに必要な材料を販売している化学メーカーも海外にあることが多くあります。その場合、海外の化学メーカーと交渉して原料を輸入するなど、グローバルな業務になります。

6.その他間接部門

上記に挙げた仕事以外にも会社のお金や会計を管理する経理財務部門、各契約の締結に携わる法務部門、会社で働くヒトの管理を行う人事部門など多くの間接部門があります。これらは化学メーカーならではの仕事ではなく、会社を経営していく上で必要不可欠な仕事です。

化学メーカーへの就職

化学メーカーの採用の多くは理系学生です。これは化学メーカーの核である研究開発や製造には専門的な知識やスキルが求められるためであり、応募条件として学部を指定されることも少なくありません。

しかし、文系学部出身者の活躍の場がないわけではありません。顧客との綿密なコミュニケーションが求められる営業職、経理財務や人事などの間接部門は化学メーカーにも不可欠で、これらの職種には卒業学部は関係ありません。理系学生ほど採用数は多くありませんが、多くの化学メーカーが文系学生の採用を行っています。

化学メーカーは理系学生には非常に人気の高い企業です。就職実績を見てみても旧帝国大や国公立大などいわゆる高学歴の大学が占めています。

一方で、最終製品を扱っていないことから文系学生にとっては知名度が低く、応募も多くないようです。テレビCMなどに積極的なBtoC企業は就活生にも馴染みがあるため、選考への応募が殺到します。そのため高学歴な学生も多く集まり、就職活動では激戦となります。化学メーカーの知名度が低いのは最終製品を扱っておらず、一般消費者を相手にしていないからというだけで、決して有名なBtoC企業に劣っているということではありません。独自の技術で世界トップシェアを誇る企業も多く、目立たないが優良な企業が数多く存在します。

優良化学メーカーを見つける ~ニッチ市場No.1企業に注目~

化学メーカーは馴染みがありませんが、高い技術力で安定的な業績をあげる優良企業が多いとお話してきました。四季報や業界地図などでたくさんの会社の存在を知り、どんな分野に強みがあるのかを見てみてください。ここでは一般消費者の知名度は高くありませんが、ニッチな市場でNo.1を誇る化学メーカーをいくつか紹介します。

<大陽日酸>

モノづくりの過程に不可欠な産業ガスで国内No.1の企業です。産業ガスとは酸素・窒素・水素・ヘリウムなどであり、鉄鋼・化学・エレクトロニクス・自動車などの製造業のほかにも、医療や宇宙・航空などあらゆる分野に提供しています。2014年には三菱ケミカルHDの一員となり、海外展開や研究開発の進展が期待されます。

<ニフコ>

工業用ファスナーで国内No.1の企業であり、そのシェアは70%を誇ります。 工業用ファスナーとは一般的に知られている洋服などのファスナーではなく、自動車や家電製品の組み立て時に使用される物と物をつなぎ合わせる「留め具」のことで、主に内外装部品やワイヤーハーネスなどを本体に固定する際に利用されています。車の組み立てに欠かせない部品です。

<エフピコ>

スーパーやコンビニ弁当で使われる食品トレーで国内No.1の企業です。 コンビニ弁当が電子レンジであたためられるのは、エフピコが耐熱性の高いトレーを作っているおかげです。近年は環境問題への取組みも顕著であり、リサイクル製品エコトレーが同社の売上高の20%を占めています。

<日本パーカライジング>

金属の表面処理という分野で国内No.1の会社です。金属にはそのまま塗料を塗ることはできず、金属に色を塗ったり、錆びないようにするために必ず表面処理を行います。自動車や飲料缶、航空機が錆びないで、鮮やかに塗装できるのは日本パーカライジングの技術のおかげです。特に自動車の表面処理では国内70%、世界で20%のシェアを占めています。

<高砂香料工業>

香料において国内No.1、世界5位の企業です。 お菓子やジュース、アイスクリームなどのフレーバーに加え、 香水や化粧品、石鹸、洗剤、シャンプーなどのフレグランスは実は高砂香料工業のおかげで成り立っています。香料を創り出す技術を活用し、医薬品やエレクトロニクスといった幅広い分野にも貢献をしています。

化学メーカーの志望動機

志望・エントリーする企業(特にBtoB企業)を絞っていく際には、まず自分が「どのような業界で、どのような仕事をしたいか」を明確にし、それらとマッチする企業を探していくことが一般的であると思います。そのため、面接などで志望動機を答える際にも、①働くにあたっての自分の希望(いわゆる就職活動の軸)→②化学業界を魅力に感じた理由→③特にこの企業を魅力に感じた理由という流れで話すと自然です。

②化学業界を志望する理由を話すためには、化学業界の業界分析を行い、強みや弱み、他の業界とどう違うのかを理解することが必要です。前回コラムで化学業界の特徴、今回コラム前半で仕事内容をご紹介していますので、これらを参考に自分にとって何が魅力に感じたのかを整理してみてください。化学メーカーの中でも③なぜこの企業に魅力を感じエントリーする(した)のかを話すにあたっては、企業のホームページや開示資料から企業分析を行い、その企業の強みや独自性を織り込むといいでしょう。企業分析の方法やポイントについては次回コラムでご紹介していきます。

化学メーカーは単にモノを作って売るのではなく、そのモノでできるソリューションを提供しています。 そのため志望動機も「モノをつくる」「モノを売る」という点だけに注目してはいけません。化学メーカーが製造販売している製品が、社会に対して何を提供しているのかに着目することが必要です。下記に志望動機の例を上げますので参考にしてみてください。

  • 最終製品のもととなる素材を作っていることから幅広い分野に貢献できる。
  • 最終製品ではないが、川上から川下まで化学メーカーの製品が身の回りに深く関わっている。
  • 素材の力で人々の生活をより良いものに変える可能性を秘めている。
  • 独自性の高い技術力を生かし多角的な事業分野で働きたい。
  • 非常に幅広く事業を展開しており、技術の応用に積極的であること。
  • 世界に広く展開しており、海外で活躍するチャンスがある。
  • 環境問題に関心があり、ソリューションを貢献できる製品群がある。
  • ニッチな市場でトップシェアを獲得する独自の技術力があること。
  • 少数精鋭な環境で、自分の個性を生かして活躍したい。

おわりに

化学メーカーへの就職は理系学生中心ではありますが、文系学生にも活躍の場が大いにあります。知名度が低いことから高学歴学生からのエントリーも比較的少ないようです。知名度が低くても、独自の技術をもっていたり、ニッチな市場でトップシェアを誇ったりと、優良な企業がたくさんあります。ただし文系学生の採用は化学メーカーの中では少数であり、BtoC企業に比べても小規模であるため決してハードルが低いという意味ではありません。自分の働きたい業種・仕事を明確にし、知名度はなくても優良な企業を見つけ、企業ごとの特徴や強みを把握して、是非チャレンジしてみてください。次回のコラムでは志望動機をより明確に答えるために必要な企業分析の方法やポイントをご紹介していきます。

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